薬用せっけんで問題になっている成分ですが、アメリカ食品医薬品局（FDA）が、19種類の殺菌剤を含有する薬用石鹸やボディソープなどの販売を禁止すると発表し衝撃を与えました。
アメリカで販売禁止の殺菌剤を含む石鹸は、日本では野放しの状態…優れた殺菌は効果ない！アメリカ当局が指摘。
通常の石鹸と比べ免疫系に悪影響か
2016年9月2日、アメリカ食品医薬品局（FDA）が19種類の殺菌剤を含有する石鹸などの販売を禁止すると発表しましたが、これらの殺菌剤を含む石鹸は、通常の石鹸と比べて優れた殺菌効果があるとはいえず、かえって免疫系に悪影響を及ぼすおそれがあると警鐘を鳴らしています。そして今回の措置は成分の使用禁止ではなく、商品の販売禁止という驚くべき規制でした。
殺菌剤のうち「トリクロサン」と「トリクロカルバン」という成分は、日本でも殺菌作用をうたう石鹸やハンドソープ・ボディソープ・歯磨き粉などに広く使用されており、さらに、防腐剤・抗菌剤・消臭剤として、化粧水やクレンジング剤・美容液・フェイスクリーム・日焼け止めといった化粧品類等幅広く添加されています。
特に「トリクロサン」は以前から危険性が指摘されており、2013年にはアメリカ食品医薬品局（FDA）が「トリクロサン」を含む石鹸などを製造する企業に対し、抗菌石鹸の病気予防や感染抑制効果が、普通の石鹸よりも勝ることを実証するよう要求していました。そして今回の発表では、「トリクロカルバン」も同様の危険性があるといいます。
日本で販売されている殺菌剤を使った多くの製品は、「薬用」と名前がついているものが特徴で、購入前に、成分をよく確認することが大切です。
日本の殺菌剤を使った製品
・薬用石けん「ミューズ」
・花王の薬用石けん「ビオレ」
・サンスターの歯磨き「ＧＵＭ」
・マンダムの薬用シャンプー「ルシード」 など、
薬用と書いてある石けん、ソープで、殺菌・抗菌をうたう商品のほとんどは、
この「トリクロサン」「トリクロカルバン」を含んでいます。
「トリクロサン」や「トリクロカルバン」は環境ホルモン作用が指摘され、内分泌かく乱作用や筋収縮異常との関連が懸念されている成分です。動物実験の結果では肝硬変や肝細胞がんの発症リスクが高まることが判明している大変怖い成分だとしています。
食品添加物ではないとはいえ、皮膚を通して体内に取り込まれることがわかっており、歯磨き粉、マウスウォッシュなど口腔に使用する製品によって体内に取り込まれる可能性も非常に高くなっているといいます。
アメリカ食品医薬品局（FDA）の調査では、「トリクロサン」含有製品を使用している人のうち、実に75％もの人の尿から「トリクロサン」が検出され、授乳中の女性の母乳にいたっては97％もの人から検出されたというデータも出ています。
さらに、「トリクロサン」や「トリクロカルバン」は河川などの水質調査でも検出されることが多くなってきていることがわかっており、下水から河川そして海へと危険な化学物質を排出していることになり、生態系への影響も無視できない状況にあります。
「トリクロサン」を含む製品について、2015年からヨーロッパでは既に販売をすることができないようになっています。
このようなアメリカやヨーロッパの動きを受けて、日本政府もいよいよ重い腰を上げ対応に乗り出しました。9月7日の記者会見で菅義偉官房長官は「日本においても同様の成分を含む商品の確認を早急に実施し、とるべき措置について検討を行っていく」と発表しました。
ロバート Glatter医師が語った助言
アメリカ・レノックス・ヒル病院（NYC）の医師、ロバート Glatter氏が語った助言によれば「手洗いにおいて最も肝心なのは、時間をかけてゴシゴシ洗うという単純かつ機械的な動作です。特に細菌や汚れが溜まりやすい爪のなか、指のあいだに注意することが大切です。それは除菌剤や石鹸などを使う場合も同様で、最低20秒以上は手を擦り続けるのが賢明でしょう」と。
肝心なのは動作のほうで、医師であるロバート Glatter氏は「薬用も大差（＝効果）ないよ」と言外に示唆していたのかもしれません。今回のアメリカ追従の政府表明は迅速だったかもしれません。しかしそこから先は、やれ審議会や検討段階など何やかやあり、迅速にメーカー側に具体的な指示がいつ出されるのか？まだわかっていません。
まとめ
これを受けて日本の各メーカーでは「トリクロサン」や「トリクロカルバン」を使用していた製品に対し、イソプロピルメチルフェノールなど別の殺菌成分に切り替える商品が出始めるようになっています。
しかし、そもそも抗菌石鹸を使用する必要があるのかどうか？複数の外科の医師は手術をする前でも普通の石鹸で手を洗い、水でよく流し、アルコールスプレーで消毒をする程度だといいます。その上で手術用手袋をしますが、抗菌石鹸を使うという声はなかったそうです。しかし現代人の多くは手洗いに限らず、普通の生活を送る上でも殺菌・抗菌という言葉に過敏になり過ぎてきてしまっているようにおもいます。
今後の国の措置がどうであれ、今回の石鹸報道を聞かれた方はまず、「薬用」「除菌」「殺菌」「抗菌」などの、表示に対する固定概念を自ら洗い流し、表示よりも、むしろ肝心なのは手洗いの基本的な動作を大切にした方がいいのかもしれせん。
