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警察のGPS捜査は、違法か?・適法か?について

警察のGPS捜査は、違法か?・適法か?について書いてみました。GPSは、人工衛星を利用して位置情報を割り出すことができる全地球測位システムで、この端末をつかった警察の捜査方法をめぐって、違法か?適法か?と、裁判所の判断が大きくわかれています。

 

捜査令状なしでのGPS捜査は違法、プライバシーの侵害!最高裁初判断!!

 

2012~13年に主に近畿地方で発生した連続窃盗事件、大阪府警は約7か月間の捜査の過程で、被告の男(45)らの車両19台にGPS端末を取り付け、追跡していました。結局被告の男は逮捕されるのですが、ただその時の捜査手法に対し、違法?適法?で裁判となり、そして2017年3月15日最高裁は、捜査令状がなければ違法と判断しました。

 

捜査令状なしのGPS捜査、過去の裁判は?

 

報道によると、2016年6月下旬名古屋高裁は、裁判所の捜査令状を取らずに捜査の対象となっている人の車にGPS端末をとりつけて捜査を行っていたことへの違法性が問われた裁判、

 

『プライバシー侵害の危険性があり、捜査令状は必要である』として、警察の捜査を違法であったとする判決を下しており、また一方で2016年3月大阪高裁は、ある窃盗事件の判決のなかで、捜査令状なしに容疑者の車にGPS端末を取り付けた捜査について

 

 

『プライバシー侵害の程度はかならずしも大きくない』『重大な違法があったとはいえない』という判断を示しています。なぜ、このように異なる判決がおこなわれるのでしょうか?。GPS端末をつかった捜査をどう考えればいいのか考えてみたいと思います。

 

 

令状なし捜査、過去の裁判は?

 

警察の、GPSによる捜査の位置情報の取得は、容疑者の車の下などにGPS端末を取り付け、捜査官が携帯電話から発信器に接続すると、日時や地図、おおよその位置が表示されるというものになっています。

 

2016年6月、名古屋高裁は令状なしのGPS捜査は『違法』とする判決を出しました。これまでGPSによる捜査については、『強制処分』であることを前提に、令状なしの捜査は『違法』とする一連の下級審裁判例(大阪地裁、名古屋地裁、水戸地裁)、

 

 

任意処分として『適法』とする下級審裁判例(大阪地裁)、『重大な違法とはいえない』とした大阪高裁判決など、まだまだ裁判所によって判決に大きく開きがあり、複雑に入りまじり、錯綜(さくそう)している状態です。

 

 

GPS捜査には2つのパターンが

 

GPS捜査は、すべてが同じやり方ではないらしく、大きく分けて2つのパターンがあると考えられています。

 

1つは、通常の張り込みや尾行といった『任意捜査』を補助するために使用するパターンで、張り込みや尾行は、テレビ等の『刑事ドラマ』でやっているほど簡単ではないらしく、例えばドラマのように犯人のいる部屋を見わたせる空部屋なんてそう都合よく見つからないと言います。

 

 

張り込みは、路上駐車した覆面パトカーの中やビルの屋上、塀の影など、かなり劣悪の環境で長時間の張り込みをしなければならないことも多く、かといって犯人はいつ移動するかわからず24時間気を抜くことができません。

 

 

尾行するにしても、付かず離れず、適度な距離感を保ってついていく必要があり、一瞬の油断で見失ってしまいます。このように張り込みや尾行はとても難易度の高い捜査方法で、捜査員の健康状態にもあまりいいとは言えません。

 

 

犯人が車で移動するため、その動向を把握したり、もしも犯人を見失った場合に備えて、補助的にGPS捜査をおこなうケースもあるといいます。

 

 

これまでの場合、GPS捜査は任意捜査である張り込みや尾行の補助的な捜査と位置づけられ、プライバシー侵害の程度も低いというので、GPS捜査は強制処分ではなく、令状も不要とされていました。

 

 

 

「令状」が必要になるパターン

別に、GPS捜査を行動確認のための捜査方法として使用するパターンがあり、それは数カ月間など比較的長期のスパンで、1日100回以上の位置検索をおこなって、24時間犯人の動向を監視するような捜査手法があります。

 

しかし、これは捜査上、必要とは認められない場合にも検索をおこなうことになり、プライバシー侵害の程度も高いことから、これまでの判例理論にあてはめれば、違法といいことになり、GPS捜査による位置検索は、捜査官が五官の作用によって犯人の位置情報を観察する『検証』としての性質を有しており、令状を取得する必要がある。となります。

 

24時間の行動を確認するやり方は?

「GPS捜査を『違法』とした一連の下級審裁判例と今回の名古屋高裁判決は、GPS捜査を24時間犯人の行動確認をおこなうようなやり方で使用したパターンと認定したうえで、検証にあたることから、令状が必要としました。

 

一方これに対して、『適法』とした大阪地裁は、任意捜査を補助するために使用したパターンに近いと事実認定したため、任意処分であり『適法』としました。また、『重大な違法といえない』とした大阪高裁判決は、強制処分か任意処分かは明示していません。

 

GPS捜査で得られる情報は、容疑者の車両の所在位置に限られており、使用者の行動の状況が明らかになるものではないことと、車両の位置情報をたえず取得・蓄積し過去の位置情報を網羅的に把握したものでもないことから、プライバシー侵害の程度は大きいものではないとしています。

 

 

このことから考えると、どちらかというと、任意捜査を補助するために使用したパターン、もしくは中間に近いと事実認定していると考えられています。

 

 

GPS捜査には2つのパターンがあることから、事実認定のレベルでどちらなのか、丁寧に検討することが必要ですがただし、一連の裁判例を読む限り、GPS捜査を24時間犯人の行動確認を行うようなやり方で使用したパターンが多いようです。

 

 

アメリカ連邦最高裁は2012年1月、他人の自動車に捜査令状なしにGPSを取り付ける行為について違法性を認めています。また、日本でも、携帯電話の基地局にかかる位置情報を取得する場合(犯人が所持している携帯電話の電波から犯人の居場所を検索する場合)は、検証としていわゆる『位置探索令状』を取得するという実務の運用もあります。

 

アメリカ連邦最高裁の判断や位置探索令状とのバランスからすれば、GPS捜査を24時間犯人の行動確認をおこなうようなやり方で使用するパターンについては、違法として検証許可令状を取得しなければならないようです。